こだま通信 Vol.39 2004年7月号 2P(1/fゆらぎ )

森の中で耳にする枝葉が風にそよぐ音や小鳥のさえずり…。心地よい自然が奏でるハーモニーは、気分を和らげ私たちに安らぎを与えてくれます。こういった心やすらぐリズムを「1/fゆらぎ」といいます。心地よい音楽を聴いたり、快い感じを抱いたり…安静にしているときの脳波にも「1/fゆらぎ」が存在しています。自然界の中で人類が数千年のあいだ接してきた「母なるリズム」であり、人間本来の機能を保つために最適なリズムこそ「1/fゆらぎ」なのです。

自然現象の中の1/f ゆらぎ
1/fゆらぎの性質を持つものには、癒しの効果があるそうです。さわやかな風が気分を爽快にしてくれるなど、自然現象をパワースペクトル分析するときれいな1/fになるそうです。人間は常にゆらいでいるものであって、ゆらぎは「生」の本質をなすものであり、「ゆらぎが消失したとき私たちを待ち受けるものは、死のみである」と結論付けている研究者もいます。森の中を歩けば木の葉がザワザワと音をたて、一面の野原に出れば草がソヨソヨとなびく。これらはすべて大気の動きによって作り出された風によるものですが、この風の息にも1/fゆらぎがあり、さえずる小鳥の鳴き声にも、近くを流れる小川のせせらぎの音にも1/fゆらぎが存在します。そしてそれらは人に心地良さをもたらす…これが1/fゆらぎのリズムなのです。もし、そこにヘリコプターがバタバタと音をたてて飛んできたとしたら、人は不快を感じるはずです。なぜなら、ヘリコプターの音には1/fのゆらぎは見出せないからです。

生体の中の1/f ゆらぎ
ゆらぎは「生の本質をなすもの」…であるならば、私たちの体の中にも無数の1/fゆらぎが存在することになります。その生体のリズムの典型が心臓の鼓動で、心臓は一見規則的に脈を打っているようですが、完全に規則的なリズムというわけではありません。運動をしたり、大勢の人の前でスピーチすれば緊張もするし、お酒を飲めば心拍数も上がります。実際に心電図の心拍の間隔を調べると、健康な人が安静にしている状態でも、心拍間隔は平均値プラスマイナス10%も変動があり、ゆらいでいるといいます。そのゆらぎをスペクトル解析すると、きれいな1/fを示すといわれています。

1/f ゆらぎを応用するとどんなことが出来るの?

街中に出てみると、直線や直角といった幾何学的なものがあふれています。人がものを作るとき、生産性、効率性を考えると幾何学的なほうが都合がいいのですが、無味乾燥で冷たいものになってしまいます。その点、昔ながらの手作りのものはきれいに整っていない分、暖かさがあります。現代のような大量生産、大量消費社会では、手作りのものはどんどん淘汰されています。そこで「1/fゆらぎ」を数学的に応用すると、昔ながらの手作りの味を出すことができます。数学的に応用することからふつうの生産ラインにのることができ、大量に生産することができます。ストレスの多い現代社会に安らぎを与えることができるのです。

例えば、等間隔の直線を「1/fゆらぎ」間隔に並べ替えてみると、木目(柾目)の雰囲気になります。「1/fゆらぎ」を用いることで、やわらかい感じを出すことが出来ます。

等間隔

「1/fゆらぎ」
間隔

電車の中でよく眠れるのはなぜ?

心を癒す不思議なゆらぎ
ウトウトと眠りに引き込まれるあの心地よさは、誰もが経験したことがあると思います。とくに難しい本を電車で読もうとすると、すぐ眠くなってしまいますよね。 電車の心地よさはその揺れにあります。ゴトゴト、ゴットンというあの独特な電車の揺れは、レールのつなぎ目からの衝撃のほかに、左右のレールの高さの違いから発生する「ゆらぎ」が原因なのです。専門的には「水準狂い」と呼ばれるもので、 レールそのものは平らで同じ高さに作られているのですが、地盤や荷重のかかり方 が原因で、次第に不均一に沈んでいきます。電車の揺れが1/fゆらぎを示すの は、レールの歪みがその上を走る電車の 車軸と座席のスプリングを通して乗客に 伝わるからなのです。 「ゆらぎ」という言葉からどんな現象を思い浮かべることが出来ますか? 例えば、ゆらゆらと揺れるロウソクの炎。炎には不思議な力があるそうです。ある大学のパーティーが雪山で遭難し、雪洞を掘ってビバークした事がありました。悪天候で救助ヘリが飛べず、無線で対応した専門家は彼らに雪洞の壁にロウソクを灯し、それをじっと見続けるよう指示したそうです。その後、彼らは無事救出され、「寒さと空腹から極度の疲労感に襲われ、疲労感は次第に絶望感へと変わり、低体温症で意識がもうろうとしてきたとき、ゆらゆらと揺らぐオレンジ色の炎を見つめていると、不思議と心が落ち着いた」と、そのときの状況を語っています。ゆらゆらと 揺れるロウソクの炎を見つめているだけで、衰弱した肉 体を恐怖と絶望から守ることが出来たというこの話は、 まさに「ゆらぎ」が生命の力に深く関わっていることを 示しています。

※右写真はVOL.39の2pの本刷りのものを写真化したものです。→

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