新モデルハウス『MCM RANCH』
インナーガレージのある平屋~MCM RANCHってなに?~
こんにちは。
設計課の木内です。
先日、神栖展示場にて新モデルハウスの上棟式が行われました。
これほど大規模な式が催されるのは今ではとてもレアですので、
折よくご参加された方はよい思い出になられたかと拝察します。
さて、無事棟上げされた「MCM RANCH」、一体どういう建物なのか?
良い機会なので自分なりに、
その建築的な背景について思いを巡らせてみました。
拙文ですがご笑覧頂ければ幸いです。
MCM、そしてRANCHってなに?という点を整理してみたいと思います。
MCM(ミッド・センチュリー・モダン)とは
人類に産業革命がもたらされてから1世紀ほど続いた「モダニズム」という取り組みを、
特に1950年代(=ミッドセンチュリー)のアメリカにおいて注目した表現と言う事が出来そうです。
当時のアメリカは戦後好景気の楽観的なムードと
プラスチックや積層合板といった新素材の台頭が作用し合い、
建築に限らずインテリアや工業製品など幅広い産業で
「新しいものを作ってみたい」というエネルギーが満ちていました。
そのため、MCMと言えば建物はもちろんですが
この頃に製作された椅子や家具に特徴があります。
既存のスタイルに縛られない幾何学的な軽やかさ、
時に近未来を予感させるポップでカラフルなデザインが魅力です。
下記のイメージは、
イームズ夫妻による芸術的なラ・シェーズ、
エーロ・アールニオ氏によるスペースエイジなボールチェアです。
出典:https://scandinaviancollectors.tumblr.com/post/83762121295/charles-ray-eames-la-chaise-lounge-chair-1948
出典:https://www.flickr.com/photos/myszu/3280780003/
建築はと言うと数百万の帰還兵からなる住宅需要への対応が求められていた時期であり、
その意欲的かつ代表的な回答として、チャールズ&レイ・イームズ夫妻の自邸が挙げられるでしょう。
名作イームズチェアのデザイナーが自ら設計した邸宅は、ガラスと鉄骨を中心とした
既製工業製品のみで造られました。
手頃に入手できる材料を使って心地よい住まいづくりを目指すという考え方は
今では広く知られたテーマですが、表立って実践され始めたのはこの時からだったと思います。
イームズ自邸はその先駆けとして存在感を放っています。
出典:https://www.dezeen.com/2019/05/09/eames-house-conservation-management-plan/
Ranch(ランチ)とは牧場、とりわけ放牧が可能な大牧場の事を指します。
しかし建築的な文脈から引用するならば、これは
北カリフォルニア海岸の低層集合住宅、
シーランチ・コンドミニアムが思い浮かびます。
出典:https://www.flickr.com/photos/36484036@N00/3498545533/in/photolist-23oZnUP-6jwom-24yCzfN-iDXhnK-kaBYs7-atJcG8-atJRMF-auR2Dq-auR4n5-atLRLs-auNrk4-auNqac-atMhvf-auNk66-auRaaN-atJTWX-auNjmX-atJccP-31r2uc-atJNA6-atJMA2-atJSTT-atJAJr-auNiD6-6ke8NQ-7SaSbh-6k9XGz-2Ggia4-2Ggiwn-2Gkzkh-2Ggh3x-2GkzaS-2GghNt-2GkAc3-2Ggg4a-2GkzJf-2GkzvU-2GghX2-2GkyR7-2GkBcy-2GkAvm
竣工時期は1965年。カリフォルニア州ソノマ群の広大な海岸一帯を
Sea Ranch(シーランチ=海の牧場)と名付け、
自然環境に干渉しないよう配慮して計画された土地開発の一環でした。
コンドミニアムは週末の賃貸に提供する事を意図されており、
設計はチャールズ・ムーアという方です。
土地に溶け込むように配置され、地元の木を使った素朴な仕上がりは
今見ても古さがなく、当時日本で建築を志した人達も大変影響を受けたと言われています。
およそこの当たりから、モダニズムは「均一で飾り気がなく土着の歴史や文化を無視してるよね」
と見なす向きが強まり、その反応としてポストモダンという試みが展開されていきます。
そのような転換期にあって、この作品のように土地と自然に向き合い
謙虚さを持ちながらも力強い建築が現れた事は、どこか運命めいたものを感じて面白さがあります。
振り返ってみると、MCMと言えば実際にはやはり当時のインテリアや製品について連想されます。
レトロフューチャーと形容することも出来ますが、陽気で自由でありながらも機能に正直でいようとする
デザインは創造性とパワーに溢れていて、今でも多くの人々を惹きつけるからです。
そして、シーランチ・コンドミニアム―週末のための自然に囲まれたコンドミニアムのような場所は、
現在日本ではセカンドハウス、週末住宅の名を取って実践され始めています。
時代背景は微妙にすれ違った両者ですが、
よりよい空間づくりの探究の中で奇妙な邂逅を果たそうとしているのであれば、
「MCM RANCH」という取り合わせは何ともストーリーのある響きに聞こえてきます。
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